皆さんこんにちは。南方熊楠記念館のチョボいちです。
門から入って坂が始まる所、「警笛鳴らせ」の看板の右上に白い花が見えています。カミヤツデです。
中国南部から台湾にかけて自生している常緑樹です。番所山のこれは、熱帯植物園だった頃の名残です。日本では寒さで冬は地上部が枯れることが多いですが、この辺では枯れずに野生化しているものもあります。ヤツデと同じウコギ科で、鳥が種子を食べて散布します。温暖化で増えてきた外来生物の一つです。漢名は「通脱木(ツウダツボク)」、学名はTetrapanax papyriferum(Hook.)K.Kochです。papyriferumという種小名からわかるように紙を作ります。英名はRice Paper Plantで、生春巻きをつくるライスペーパーに似ている茎の髄「通草」から作る「通草紙」からイメージしてつけられています。茎を30cmほどにカットして収穫される髄は、白くて柔らかく、大きな刃物で大根の「かつらむき」のように薄く削いで、紙にするそうです。この紙は、乾燥すると薄くなり、水を吸うと適度に膨らみます。この性質を活かして、夜店などで売られていた「水中花」の花弁にしました。通草紙は、今はプラスチック製に押されて、あまり用いられなくなったそうです。松坂慶子さんの「愛の水中花」という歌、思い出しました。
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