テイカカズラの花(1):5月11日

皆さん、こんにちは。記念館の「チョボいち」です。
番所山の碑の近くへ行くと、甘い香りがします。でも、見渡しても花は咲いていません。そこで、屋上デッキからみると、クスノキやヒメユズリハの梢は、テイカカズラTrachelospermum asiaticum (Siebold et Zucc.)Nakaiの花盛りでした。カラスアゲハやシジミチョウも来ています。

テイカカズラはキョウチクトウ科のつる植物です。この辺りの森林では、どこでも見られます。森林の枝が折れたり、木が倒れたりするといちはやくつるを伸ばしてギャップを塞いでくれます。森林の傷口を治す、応急絆創膏のような働きをします。熊楠が守った「神島」は、鵜による糞害や台風の被害で大きな木がたくさん倒れました。当時調査に行くと、森全体でテイカカズラ、ハカマカズラ、ツタ、アオツヅラフジなどのつる植物が繁茂して、ジャングルのようでした。つる植物が潮風が吹き込むのを防いでくれていたのです。あれから20年ほど経っていますが、今ではつる植物も少なくなり、当時小さかったタブノキやヒメユズリハなどが大きくなって、神島の森は元に戻りつつあります。つる植物は、いざというときに大切な働きをしてくれるのです。テイカカズラの実は風に乗って運ばれます。森の中で不思議な形の実をみたことはありませんか。「ケセレンパサラン」といって宝物にしている人もいます。これはテイカカズラの種子です。