こんにちは閑話猿です。
本日は蟹の日ということで、昨年度の特別展で紹介した熊楠の甲殻類標本からピックアップしたものをお見せします。
まずヘイケガニの甲羅に熊楠が墨を入れている標本です。観察のためなのか、面白半分なのか、それとも半々なのか不明ですが、この標本には墨が入り模様がハッキリしています。
また熊楠の著作には「平家蟹の話」(『南方熊楠全集』第6巻 田辺通信 pp.47-60)もあり、生息する地域によって名称がかわり、必ずしも平家の怨念に由来するものではないこが述べられます。熊楠はこの稿の中で新井白石の説から「平家を世人が悪く言うはその事記が多く源氏の代に成ったからだ、実は一族みな西海で一度に亡びたところが、源氏の骨肉相害し二代で跡絶えたよりもよほど見事だ」を出します。大河ドラマが始まった際には「平家が滅亡してからが本番」という声も多々あったものですね。
次にもう1点紹介するのはスベスベマンジュウガニです。特別展の際にも述べたかもしれませんが、私は名前だけは知っていて実物はこの展示の際に初めて見ました。名前の響きから白っぽい蟹かと想像していましたが、実際には毒をもってそうな色をしています。このスベスベマンジュウガニも熊楠の「江島記行」(『南方熊楠全集』第10巻 pp.8-17)の江島採集購収品リストにあります。この写真のものが該当するのか判断はつきませんが、熊楠は江ノ島で「大マンジュウガニ」を購入しています。
最後に「平家蟹の話」には当時の田辺町に今川林吉という蟹類を集め、知識豊富な人物がいることが述べられています。熊楠もこの人に蟹について判断を仰いでいます。当時の田辺町には熊楠をはじめ個性的な人々が住んでいたのですね。
熊楠が甲羅の筋に墨を入れたヘイケガニ |
スベスベマンジュウガニ |