熊楠のインク資料 保存のための分析へ

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この度、熊楠がロンドン時代に書いた「ロンドン抜き書き」や「孫文のサイン」が保存のために公益財団法人 元興寺文化財研究所でインク成分の分析が実施されます。

日本では和紙に墨で書かれた資料の保存技術は確立されていますが、実は洋皮紙にインクで書かれた資料についての保存技術は明確に確立されていないようです。そもそも、和紙に墨で書いたものは、水にも強いですが、洋皮紙にインクで書かれたものは水に弱く経年で消える可能性が大いにあります。かつて、同研究所で館蔵資料の修復を実施した際には、アルカリ性剤を使用し、紙の脱酸を実施しました。これは近現代の紙資料には酸性の薬剤を塗布し、水性インクのにじみを防止する薬品が塗られていることもあり、酸性劣化していきます。そのため、資料が変色や温度湿度変化によって崩壊することもあります。

そのため、元興寺文化財研究所で蛍光X線分析装置による非破壊の元素分析を行います。これにより、現在の資料の状態を把握し、適切な処理を検討することができます。

まず、熊楠のロンドン抜書き2点から調査を開始し、土宜法竜宛書簡、孫文のサインなどロンドン時代の資料を中心に分析をすすめていきます。

 

公益財団法人元興寺文化財研究所
総合文化財センター
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