皆さん、こんにちは。南方熊楠記念館の館長です。先日、当公益財団法人の浦 聖治 理事より、和歌山市在住の雑賀絹代さんの句集「うろこ雲」のご寄贈をいただきました。
拝見させていただくと広大な紀州の自然や景勝地を訪れ、季節豊かな情景を詠まれています。どの作品もすばらしいものばかりでした。
句集の中には熊楠を詠ったものもあり紹介させていただきます。雑賀さんが当館を訪れた際の作品で、展示物が来館者に語りかける様を詠まれています。
この句集は、当館の閲覧コーナーに所蔵させていただき、たくさんの方々に見ていただきたいと思います。当館の展示物をじっくり見ていただければその様子が共感できると思います。
熊楠旧居潮の香の青嵐
梅雨湿りことに粘菌細密図 標本トランク深閑と黴匂ふ 余白なき熊楠書簡大暑来る デスマスク小さしはたた神近し |
アメリカで特注。木製のトランクで重厚な金具が付き、周囲は革で装飾、底にはキャスターが付く。正面にはニューヨークのホテルアメリカのステッカーが貼られている。アメリカで採集や購入した植物標本が1200点収納されていた。 |
「書簡 土宜法龍宛」 |
「書簡 平沼大三郎宛」 |
土宜法龍宛の書簡(小生の事の学)は罫紙の枠組を超えて文字が書かれている。
熊楠の研究を支援した粘菌三羽烏の一人、平沼大三郎宛の書簡は余白がない。
「熊楠デスマスク」(保田龍門作) |
昭和16年12月29日 熊楠が死去した夜、彫刻家 保田龍門によってデスマスクがとられた。当時は太平洋戦争が始まり型を取る石膏の調達が難しく、地元田辺の歯科医が保存していた貴重なイタリア製の義歯用の石膏を提供してもらい作成した。 |