こんにちは閑話猿です。
新年に当館に来られた方から、東京神社庁が令和6年5月に配布した「生命の言葉」(格言集)に選ばれた南方熊楠の「世界にまるで不用の物なし」をいただきました。
昨年5月の当ブログでも紹介したのですが、入手する機会を逃していたので嬉しいです。
熊楠の十二支考の「鼠に関する民俗と信念」において、この言葉を使いました。熊楠曰く「油虫ごとき害虫も家に留むれば福を齎すというはよく考えると一理あり。世界にまるで不用の物なし。(『南方熊楠全集』1巻 580―581頁)」
文脈に沿うと熊楠は、一方的なモノの見方を警告しており物事は良い面も悪い面もそなえていることを述べています。こうした熊楠の思考は、神社合祀反対運動の文章にも見られます。熊楠は樹木と下草の関係や老木のみを残して他の雑木を伐採すると老木も必ず枯れること、その逆もしかりと自然界は相互関係にあり、人間もその中にいることを述べています。「世界にまるで不用の物なし」熊楠の慧眼を示す代表的な言葉だと思います。
熊楠の言葉・生命の言葉 2024年5月12日