こんにちは閑話猿です。
お知らせが遅れましたが、『国立国会図書館 月報』(759/760 2024年7/8月)の「今月の一冊 国立国会図書館の蔵書から」に工藤哲朗「痕跡で楽しむ南葵文庫の旧蔵書―The Enoch Pratt Free Library of Baltimore City―」が掲載されています。
南葵文庫について簡単に説明すると、徳川頼倫が諸外国を視察した際に図書館の必要性を痛感し、紀州徳川家伝来の2万冊を中心に1902(明治35)年自邸内に設立しました。
上記した工藤氏の記事は国会図書館の蔵書中に南葵文庫の図書があり、そのなかに残る蔵書印や書き込みなどから本の来歴を探る内容となっています。そして、「なぜ南葵文庫の図書が国会図書館にあるのか?」についてという疑問です。補足情報として、南葵文庫の図書は1923(大正12)年の関東大震災で東京帝国大学の図書館が被災したことで、南葵文庫の蔵書約10万冊を移管されます。本来は現在の東京大学附属図書館にあるはずですが南葵文庫の蔵書印をもつ図書が国立国会図書館に所蔵されていることを、本に残された情報から検証しています。小さな痕跡を積み重ね、来歴を推理する内容はまるで推理小説を読んでいるような感覚を覚えました。
余談ですが、南葵文庫については、2023年に当館の特別展「南方熊楠と関東大震災 100年前の地震と影響」でも展示をしました。この展示では、熊楠と徳川頼倫が震災前の1922(大正11)年に会っていることや、関東大震災がなければ熊楠が小畔四郎らと南葵文庫において粘菌の展覧会を計画していたことなどを紹介しました。
国立国会図書館月報