熊楠に関する論文の紹介

こんにちは閑話猿です。

最近「南方熊楠」の名前が登場する書籍が数多く出版され、少し追いきれなくなってきています。

そんななか今回は辻本 侑生・ 島村 恭則 編著『クィアの民俗学 LGBTの日常をみつめる』(実生社 2023年)に収録されている論文で、熊楠と岩田準一について書かれた辻晶子「南方熊楠と岩田準一の「男色談義」」を紹介します。

まず、この論文が収録されている「クィア(Queer)」とは、LGBTとは何か?

大枠となるLGBTについては、「“L”=レズビアン(女性同性愛者)、“G”=ゲイ(男性同性愛者)、“B”=バイセクシュアル(両性愛者)、“T”=トランスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性別にとらわれない性別のあり方を持つ人)」があります。そして「クィア(Queer)」はLGBTに当てはまらない性的マイノリティや、性的マイノリティを広範的に包括する概念です。そうした言わば性的少数派を扱った本書に、熊楠の論文は掲載されています。

主な内容として熊楠は晩年10年もの間、現在の三重県鳥羽市出身の民俗学者岩田準一と長きにわたり「学術的な男色研究」について文通を行います。その内容についてここでは詳しくふれませんが、柳田民俗学が排除した性の研究を、柳田と相性の悪い熊楠と岩田が行うという図式が指摘されているところも興味深い点です。

 

また熊楠は岩田が面会に訪れたいという要望について、研究が多忙なことを理由に断っています。牧野富太郎の時もそうですが、「なぜ面会しない?!」と思うことが多々です。研究も大事なのですが、もうちょっと手紙以外の交流を頻繁にしても良かったのではないかと思います。