こんにちは閑話猿です。
辰歳にちなみ「龍」に関する名前があるものを紹介します。
串本町の古座川河口付近から沖合約1kmの海上にある島で「九龍島(くろしま)」と呼びます。その隣には鯛に似た「鯛島」があります。
この九龍島は、熊楠は「黒島」と表記しています。神社合祀反対運動をしていた時期に東京帝国大学理学部植物学教室教授の松村任三へ2通の書簡、いわゆる「南方二書」を書きます。このなかで熊楠は九龍島について以下のように書いています。
古座浦の黒島(九龍島)も、この稲積(島)と並んでタニワタリの名所なり。小生8年前行き、同島植物片っぱしから採りしに、そのころは一本もなく高芝、下里などという村の旅宿などに栽えたるもの多少ありしのみ。去年、児玉親輔君行きしときは多少黒島にありしと聞く(松村任三宛 『南方熊楠全集』第7巻 488頁)。
熊楠はオオタニワタリのことを書いています。特に興味深いのは「同島植物片っぱしから採りしに」という個所です。これは植物分類学の牧野富太郎も採集に出かけると、以前採集した植物にも関わらず片っぱしから採集したそうです。熊楠も紀南の植物を知る上で同じことをしていたのですね。
この九龍島の写真は、現在開催中の企画展「南方熊楠と紀南の景勝地」(令和6年2月17日(土)~3月31日(日))でも見られます。
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