よどみに浮ぶうたかたは

こんにちは閑話猿です。

『方丈記』の話題でもう一つ。熊楠の「履歴書」にはディキンズとの共訳『方丈記』、夏目漱石のこともふれられております。その箇所を引用してみると

また前述のジキンズのすすめにより帰朝後『方丈記』を共訳せり。『皇立亜細亜協会雑誌(ロイヤル・アジアチック・ソサイエティー)』(1905年4月)に出す。従来日本人と英人との合作は必ず英人の名を先に載せるのを常とせるを、小生の力居多なれば、小生の名を前に出さしめ A Japanese Thoreau of the 12th Century, by クマグス・ミナカタおよび F.Victor.Dickins と掲げしめたり。(平凡社版全集 7巻 P.19)

しかし、後の出版では熊楠の名が削られたとあります。

さらに、『日本及日本人』に漱石の伝記を書いた人物が、熊楠とディキンズの共訳を漱石のものと勘違いしたとあり、漱石の英訳(部分的)『方丈記』は未刊であったと述べられています。

今年の秋の夜長に『方丈記』など読まれてはいかがでしょうか。

フレデリック・V・ディキンズ(展示室より)

赤線部から「履歴書」にある「ジキンスのすすめにより」(全集7巻 19頁 5行)